最大非課税枠800万円(40万円/年×20年)の恩恵を受けられるつみたてNISA。
対象の投資信託(一部ETF含む)は金融庁が認めたものに限られ、基本的に長期投資に適した低コストのファンドばかりです。選択肢がある程度絞られていることで、投資初心者が投資を始めやすくなっていると言えるでしょう。
しかし、実際につみたてNISAで投資を始めるとき、「どのファンド」を「どのぐらい」購入するのかを決めなければなりませんよね。
金融庁が指定した商品と言っても、全体で200本以上あるため選定に迷うかもしれません。
上記のような悩みの解決に向けて、この記事では
- 分散投資の注意点
- 具体的なポートフォリオの組み方
を紹介します。
- つみたてNISAでは、購入すべき銘柄数の正解は無い(商品によって違う)
- たとえ1銘柄だけでも分散効果はある
- ポートフォリオは、自身の投資方針やリスク許容度、投資先の分散などの観点から決める
銘柄数と分散効果は必ずしも一致しない
つみたてNISAでの購入銘柄数を検討する理由は、「分散効果を期待しているから」ですよね。具体的な分散効果とは、「卵は一つのカゴに盛るな」という有名な格言があるように、「値動き特性の異なる商品を保有することで、暴落時の損失額を小さくするため」と集約できます。
ここで大事なのが、「値動きの異なる商品を保有する」という点。仮につみたてNISAで5ファンド保有していたとしても、それらが全て同じ値動きをするのなら分散効果はありません。
では、どのように値動きの異なる商品を見つければよいのでしょうか。その答えは、「アセットクラスが違う商品」を探すこと。
分散効果がある買い方
〇ケース1 株式と債券を購入する
分散投資の伝統的な手法の1つが、株式と債券を組み合わせること。リスクオンになると株式が、リスクオフになると債券が買われる傾向があり、値動きが異なるからです。
実際にチャートを見てみましょう。
出典:モーニングスター
上図は、たわらノーロード先進国株式とたわらノーロード先進国債券の3年間のチャートです。株式と債券のボラティリティ(価格の変動幅)の違いがよく分かりますね。債券は価格の上昇は穏やかである一方、コロナショック時の下落幅も微々たるものでした。
このようにアセットクラスを分けることは分散投資につながります。
〇ケース2 投資対象地域を分散する
次に、同じ株式クラスでも別の国・地域に投資することで分散できる例を紹介します。ここでは、先進国株式と新興国株式を比較してみましょう。
- 先進国では新型コロナウイルスのワクチンが早く普及したこと
- 先進国の株式指数の中でも大部分を占めるアメリカの株価が、金融緩和を追い風に大きく上昇したこと
などがリターンの差の要因として挙げられます。このように、世界情勢や政策により先進国と新興国では値動きに差が生じます。
この数年はアメリカ株が強かったため先進国がアウトパフォームしていますが、未来は誰にも分かりません。今後インドやASEANなどが躍進し、先進国をアウトパフォームする可能性もあります。
分散効果がない買い方
今度は、分散という点では意味がない買い方を紹介します。
特に初心者にありがちなのが、メディアでおすすめされていたり、証券会社のランキング上位に位置していたりするファンドをとりあえず買うこと。具体例を挙げて説明します。
以下は、SBI証券での週間買付件数ランキングです。
この中から、上位5つのファンドの基準価額のチャートを見てみましょう(S&P500は2つあるため、運用期間が長いeMAXIS Slimを採用)。
結果は以下のとおりです。
出典:モーニングスター
いかがでしょうか。i-FreeレバレッジNASDAQ100以外の、5本中4本が同じ同じような値動きをしていることが分かりますね。また、iFreeレバレッジ NASDAQ100だけ値動きが異なるのは、レバレッジ商品だからです。
「売れているから」という理由でそのファンドを購入するのではなく、きちんと内容を確認して買うようにしましょう。
つみたてNISAでは1銘柄でも分散効果がある
つみたてNISAの対象商品は投資信託やETFですので、1銘柄だけでも分散効果を得られます。バランスファンドと呼ばれる商品が代表的で、具体的にはeMAXIS Slimバランス(8資産均等型)や楽天インデックスバランスファンドなどの商品があります。
しかし、分散が図れるのはバランスファンドだけではありません。
たとえば、eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)というファンド。「投信ブロガーが選ぶ! Fund of the Year 2021」で1位となり、「オルカン」という愛称で投資家に親しまれている人気商品です。
出典:MUFG 三菱UFJ国際投信 eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)交付目論見書
上図は、eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)の投資対象国・地域別構成比率です。ご覧のとおり、これ1本に投資するだけで先進国・新興国両方含めた計50カ国・地域に分散投資が可能となります。
また、同じく人気商品となっているeMAXIS Slim 米国株式(S&P500)。その名のとおりアメリカの代表的な指数であるS&P500に連動した投資成果を目指すファンドなので、投資対象の銘柄数は十分に分散されています。
ここで、「たしかに銘柄数的には分散されているけど、アメリカの企業だけだから地域分散にはならないのでは?」と疑問に持つ人もいるかもしれません。
しかし、S&P500には多国籍企業が数多く含まれています。GAFAなどの大型ハイテク企業を筆頭に、マクドナルド・ナイキ・P&G・スターバックスなどは日本でもお馴染みの企業ですね。
これらの企業は世界中で事業を展開し利益を上げているので、結果的に収益源という意味においては地域分散がなされています。
ポートフォリオの組み方
投資でとても重要なのが、ポートフォリオの組み方。ポートフォリオを組むとは、「どの金融商品にどのぐらいの割合で投資するか」を決めることを意味します。
つみたてNISAにおいても、たとえば以下の点から適切なポートフォリオを構築しましょう。
- 投資目的
- 投資期間
- ご自身の年齢
ポートフォリオ構成の考え方や、具体的なファンドも交えた年代別パターンを、以下の記事で詳しく説明しています。この記事を読むだけで自分に適したポートフォリオを組めるようになりますので、ぜひご覧ください。
まとめ
以上、つみたてNISAでは銘柄をいくつ購入すればよいのかを、分散投資の観点から説明してきました。
本記事の内容をまとめると、
- 分散効果は投資する商品によって異なるため、購入すべき銘柄数に正解は無い
- 投資信託の性質上、1銘柄でも分散を図れる
- 投資方針や自身の年齢などのファクターからポートフォリオを決める
ということでしたね。
投資初心者にとっては、どの銘柄をどのぐらい買うかを決めるのは、楽しくもあり難しくもあることだと思います。
もしポートフォリオをなかなか決められないのであれば、eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)だけ購入するのもおすすめ。分散が効いているのはもちろん、リバランスも自動でされる良い商品です。
複数の銘柄を購入する場合は、銘柄の数ではなく内容をよく確認することが大切。
自身の投資目的を達成できるように、投資対象資産、国・地域、金額などの比率をしっかり決めてポートフォリオを構築しましょう。
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